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女性視点の提案からテレワーク導入がスタート。現場で仕事をする「サービス業」の挑戦

香川県
穴吹エンタープライズ株式会社

POINT

  • 女性社員が社内プレゼン大会でテレワークの必要性を提案して試験導入。

  • 「現場というお客様ありきの場所で仕事をする」サービス業ならではの課題に直面。

  • サテライトオフィス勤務を通じて、現場以外での業務体験を社員に推進。

  • 働き方の選択肢を増やすことが、現実的なテレワーク普及の第一歩。

「子育てと仕事を両立したい」女性社員がテレワークの必要性を社内プレゼン大会で発表したことがきっかけに

香川県を拠点に、ホテルやスポーツ施設、サービスエリアや公共施設の運営等を手掛けている穴吹エンタープライズは、サービス業がメインということもあり、社員の多くが各施設の現場で仕事をしています。そのため「テレワークを導入するのは難しい」という考え方が一般的で、そもそもテレワークという概念自体が社内になかったそうです。

ホテルの受付のように現場に出ることが欠かせない業務が大半を占める中、女性社員の声をきっかけにテレワークの試験導入を開始した。

しかし2017年、転機が訪れます。申請業務や研修企画を担当する女性社員がお子さんの小学校進学をきっかけに、自宅でも仕事ができる環境があれば効率よく子育てと両立できると考えて、周りの社員に相談しました。その相談に乗り、女性社員の思いに共感したひとりが、その後テレワーク導入を推進していくことになる管理部総務課の山田桂子氏です。

山田氏:「私自身は当時未婚でしたが、将来自分が子供を産んで育てていこうとしたとき、テレワークができればとても便利だと思い、彼女の思いに賛同しました。また他に子育てのベテラン女性社員2名も参加して、計4名でテレワークの必要性を会社に訴えるため、2017年の社内プレゼン大会に参加を決めました」

プレゼン大会では子育て中の社員だけでなく、介護や病気療養など様々なケースで通常勤務が困難なケースを想定して「すべての社員がテレワークを利用する可能性があること」をアピール。社内に「ダイバーシティー推進室」を立ち上げて、働き方に制約を設けず、誰もが自分らしく働ける会社にしていくべきだといった点を強く訴えました。

山田氏:「プレゼン大会をきっかけに、私たちの思いを汲んでくれた上司から『試験的に実施してみてはどうか』と、私たちの背中を押してくれました。それによって2018年の4月から半年間、最初に発案した女性社員がテレワークを実践。業務に支障をきたすようなことはなく、とても良い手ごたえを得ることができました」

現場で働くサービス業の壁と固定観念を率先して変えていこうとする社員が必要

試験導入の結果を受けて2018年10月、早速社内規定に「在宅勤務」を新たに追加。テレワーク導入の際、大きなハードルの一つとなるハード面に関しては、親会社である穴吹興産株式会社ですでにリモート勤務できる仕組みがあったため、その点に関する問題は特になかったそうです。

管理部総務課 山田桂子氏

しかしその後、実際にテレワークを利用した社員数は全社員約700名中、わずか数名。それも自宅での勤務ではなく「サテライトオフィス」のような形で、複数の拠点を移動しながら仕事をする社員が、所属先以外の場所でも仕事をするような利用がメインでした。さらに2020年の新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受け、全国的に外出自粛や在宅勤務のニーズが高まっていった時期においても、10名程度の利用にとどまるなど、遅々としてテレワークの普及は進まなかったといいます。

テレワーク普及を妨げる「大きな壁」となったのは、主に2点。

一つは、冒頭で触れた「サービス業」の働き方が、テレワークにマッチしていない点です。
同社の社員の9割近くが各施設に出勤してお客様対応する必要があることから、どうしても「仕事はあくまで現場に出てするもの」という意識が根強くありました。また上司の立場から見ると「離れた場所で仕事をする部下を監督できない」という固定観念に縛られ、テレワークに対して敬遠傾向にあったことも、導入を阻害する要因になっていたようです。そのため実際にテレワークを利用した数少ない社員のほぼ全員が、いわゆる「内勤」業務に関わっている方たちだったといいます。

「離れた場所でまずは仕事をしてみる」サテライトオフィス勤務からスタート

このようにテレワーク導入に様々な課題を抱えている同社ですが、その中でも一歩ずつ、着実にテレワークを普及させる活動を進めています。先ほど触れたように、特にサービス業の場合は「現場にこそ、仕事がある」という意識が根強いことから、まずは「現場以外でも仕事ができるのか、実際に試してもらう」取り組みをスタートさせました。

2020年末に開業したオープンイノベーション拠点『Setouchi-i-Base』。まずはここをサテライト勤務の拠点として利用。今後、他にもサテライトオフィスを増やしながら多くの社員に「現場以外の勤務スタイル」を体験してもらう取り組みを推進していく。

山田氏:「いきなり自宅で仕事をするには抵抗が強かったり、また働く環境が整っていないなど、在宅勤務に対するハードルが高いことは以前から認識していました。そこで2020年末、高松駅前のビル内に新設されたオープンイノベーション拠点『Setouchi-i-Base』を利用した、サテライトオフィス勤務をスタート。会社として法人契約し、社員がいつでも利用できるようにしました。
これまで内勤業務の社員が中心だったテレワークを、サービス部門を中心とした多くの現場スタッフにも、デスクワーク業務などに関して一時的に利用してもらう環境を作ることで、まずは一人でも多くの社員にテレワークを体験してもらうことを進めています」

こうした取り組みと並行して、テレワークにマッチした評価軸を新たに検討しているそうです。具体的には、これまで勤務時間をベースにしていた評価軸を、「成果」に見合う形で評価できる仕組み作りに取り組んでいるといいます。

しかし現状、まだまだ課題はあると山田氏は指摘しています。

山田氏:「緊急事態宣言が出て一時帰休した社員が再び現場に戻ってきたとき、社員間のコミュニケーションが以前より明らかに減っていました。その原因は、オンラインチャットによるコミュニケーションに慣れてしまっていたことです。
今後テレワークを普及させていくには、職場環境に応じた適切なコミュニケーション手段の使い分けや、社員同士が積極的に意見を出し合える環境を作っていく必要があると思います」

働き方の選択肢を増やすことが、テレワーク普及の第一歩。まずは社員に体験してもらうことが重要

今回ご紹介した穴吹エンタープライズのように、全社員を対象にテレワークを導入しようとする際には、様々なハードルに直面してなかなか普及していかないケースが多くの企業で起こりうることでしょう。同社も2017年の発案から試行期間を経て導入後、コロナ禍による外的要因もありながら、それでも現時点でまだ一部の社員の利用にとどまっています。

テレビ会議システムの導入や社用PCの支給によって、テレワークができる環境づくりを着実に進めている。

特にサービス業の場合、「現場というお客様ありきの場所で仕事をする」これまでの働き方が固定概念として深く根付いているからこそ、この概念を打破していくのはかなり難しいテーマ。その中で、少しずつその概念を変えていくためには、まずは小さなことから始めてみることが大切だと山田氏は語ります。

山田氏:「テレワークを試した社員の肯定的な感想が社内で広がり、徐々にやってみようという社員は増えてきていると思います。実際に試してみることで、実はテレワークになっても業務上、それほど大きな問題がないことに気づけるので、周りの理解を得やすいのです。
在宅勤務が難しければ、まずはサテライトオフィス勤務からスタートすることで、一人でも多くの社員に〝体験″してもらうことが最初の一歩として重要。
そこから、少しずつ従来の固定概念を変えていくことができると考えています」

サービス業の働き方改革という難題に挑む穴吹エンタープライズの今後に注目したい。

穴吹エンタープライズ株式会社

香川県
所在地 香川県
業種 サービス業(他に分類されないもの)
企業規模 300~999名
URL https://www.anabuki-enter.jp/

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