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コロナ禍直前で「リモートワーク実施率7割」を実現できた、10年間の実践・検証と働き方変革の軌跡

東京都
株式会社リコー

POINT

  • 2010年頃から在宅勤務の試行を開始。2016年に対象者を絞って在宅勤務制度を導入し、スモールスタート。

  • 社長直轄プロジェクトで「働き方変革」を強力に推進~1年間で全社員対象に拡大。

  • 国際的スポーツイベント開催1年前から計画的にリモートワークを実践・検証。

  • 入念な準備により、コロナ禍直前で約7割がリモートワークを実践。

2010年頃から在宅勤務を検証。2016年に対象者を絞って制度導入し、スモールスタート

リコーでは1990年代から、ワークスタイルの変革や多様な人材が活躍できる環境づくりを推進してきました。その結果、2010年頃までにはグループウェアの導入をはじめ社内無線LAN/WAN/VPN等、在宅勤務に必要なITインフラ環境が一通り整備されていました。2010年頃から、ソフトウェア開発部門等、現場から要望のあった部門で在宅勤務の試行を開始しました。

人事本部 人事部 ダイバーシティ推進グループ スペシャリスト 長瀬琢也氏

しかし実際に在宅勤務制度を導入したのは、2016年度のこと。なぜ長い期間を要したのか?リコーでリモートワークを推進している長瀬さんはこのように語ります。

長瀬氏:「実際に在宅勤務を試行した社員からは『生産性が上がった』『仕事以外の時間を有意義に過ごせる』等評価は高かったのですが、まだ在宅勤務に対してネガティブなイメージ(ルーズな勤務になる、コミュニケーションが希薄になって生産性が落ちる等)も根強くありました。
生産性やコミュニケーションに関して、数値化して効果を示すことは難しく、全社で制度導入することに対して、当時はなかなか理解を得られませんでした。」

そこでまず「育児や介護と仕事を両立する社員」「外出時の立ち寄りで移動時間削減ができる社員」「海外拠点との深夜ミーティングに自宅から入ることで待機時間を削減できる社員」といった在宅勤務による効果がはっきり出る社員に限定。
さらに「月5日・週2回まで」という上限を設けることで社内の理解を経て、制度がスタートしたのです。
しかし、ここまで対象者や利用を限定したこともあり、実際に制度を利用したのは約200人。当時全社員約1万人に対して2%にとどまるなど、まだまだ全社に制度が普及したとは言えない状況でした。

新社長が掲げる「働き方変革」を強力に推進。わずか1年で、制度の利用率が15倍以上に

在宅勤務制度が普及しない状況を大きく変えたのは、2017年に就任した山下良則社長が掲げた「働き方変革」です。一般的には「改革」ですが、そうではなくあえて「変革」とした意図について、長瀬氏はこのように説明します。

在宅勤務中の社員の様子。新たな「リモートワーク制度」導入後、わずか1年で3000人以上の社員が実践したことにより、急速に普及した。

長瀬氏:「これまでの前例や慣習にとらわれず、働き方に対する考え方を大きく変えようという強い意志がこの『変革』という言葉に集約されています。在宅勤務の場合、これまでネガティブなイメージを持っていた社員もいましたが、そのような心配をするのではなく、社員を信頼するということをベースに、社内制度や設備を整え、社員の意識を変えていくことを目指しました」

「働き方変革」の旗印の元、新たに社長直轄のプロジェクトチームを立ち上げ、各部門からメンバーが参加してワーキンググループを編成し、頻繁に議論を行ったそうです。

働き方変革の取組みには「Microsoft365」等の導入による業務環境のさらなる整備はもちろん、マネージャーへの研修も実施。
制度改定のポイント、制度利用を認める判断基準、コミュニケーションの注意点等を教育したそうです。
またこの年から「テレワーク・デイズ」に参加し、部門長やマネージャーが率先して制度を利用することで在宅勤務の効果を自ら体験。
その効果もあり、部門長自ら働き方変革について決意表明する「クールボス宣言」では、今後も率先して在宅勤務を行うことや「会議をする際はリモートでOK」と宣言する方も多くいるそうです。

そして働き方変革を掲げてからわずか1年後の2018年、これまでの在宅勤務制度を全面的にリニューアルした「リモートワーク制度」をスタートしました。

これまでと異なる点として、

  • 「全社員」に利用対象範囲を拡大
  • 「月10日・週3回まで利用可能」に拡大
  • 自宅以外にもサテライトオフィスで勤務可能
  • セルフマネジメントできることを前提に、上司の承認さえあれば誰もがリモートワーク可能

等大きく変化しました。

その結果多くの部門・社員がリモートワークを実践し、2018年度末の利用登録者数が3163人と、わずか1年で15倍以上に急増したのです。

長瀬氏:「1年でこれだけの成果を出せたのは、これまでの準備に加えて、新社長による強力なリーダーシップや社員とのコミュニケーションが大きく影響したと考えています。経営トップが旗振り役となってリモートワークを含めた働き方変革を後押しする上、マネージャーが続々と制度を利用するようになったことで、リモートワークが当たり前という風土が醸成されてきたことが、短期間で普及した大きな要因ではないでしょうか」

国際的スポーツイベントに向けて1年間、ほぼ毎月一斉リモートワークを実施・検証。コロナ禍直前で全社員の約7割がリモートワークを実践

わずか1年で大きな成果を生み出した「リモートワーク制度」。そして2019年度、リモートワークのさらなる普及に向けて大きな動きが生まれました。それは2020年度に予定されていた国際的スポーツイベントの開催期間中、首都圏の混雑緩和貢献を目的に2週間、本社をクローズするというもの。また本社だけでなく、首都圏の他の事業所も含めてできる限り在宅勤務を行う方針を打ち出したことから、新たなプロジェクトチームを発足し、それから約1年をかけて計画・検証・対策・確認~実施に向けた取組みを行いました。

1年をかけて定期的にリモートワークデーを設定・実施したことで、コロナ禍直前段階までには約7割がリモートワークを実践。

長瀬氏:「目標は本社勤務の9割以上の社員が一斉に在宅勤務を実践すること。そのため、毎月のように『一斉リモートワークデー』を実施したり、『本社クローズ検証日』を設けることによって、様々な問題点を洗い出していきました。
毎回、本社全体の6~7割程度が参加しましたが、参加できなかった社員に対しては個別にヒアリングをして、どうすれば出社せずに業務を回せるか、課題を検討してその都度、対応策を講じることによって目標に達することができました」

このような取組みによってコロナ禍直前の2020年2月時点でのリモートワーク制度利用登録者数は6328人と、全社員の約7割にまで拡大。そしてこの直後、新型コロナウイルス感染症拡大に伴う政府からの感染拡大防止要請があり、3月2日から「原則在宅勤務」を全社員に通達しました。特に4月~5月の緊急事態宣言発出中、首都圏4事業所の平均出社率は約7%に抑えられ、社長自身も積極的にリモートワークを行うことによって、2か月間で出社したのはわずか4日だったそうです。
このような緊急事態下での全社員一斉在宅勤務移行によって、何か影響はあったのでしょうか?

長瀬氏:「IT部門に対して、これまで在宅勤務を実施したことがなかった社員を中心に『家にWi-Fiがない』『社内ネットワークに接続できない』『モニタを持ち帰りたい』等の問い合せが一時的に集中しました。
しかし、それに対してはチャットボット等で問い合せ対応体制を増強したり、Wi-Fiルータを貸し出したりする等、適切なサポートをすることで、無事に乗り切ることができたと思います」

その後、全社員に対して新型コロナウイルス対策を巡る会社の対応や指示についてのアンケート調査を行ったところ、全体の約8割が「適切・明確だった」と答えています。これだけ高い評価を得たのも、コロナ禍前において全体の約7割が在宅勤務を実践することですでに「習慣化」していたことが大きかったようです。

現場からの「やりたい」という声を受けて、在宅勤務をスモールスタートするのがベスト

今後の課題として長瀬氏が挙げるのは、リモートでの効率的なコミュニケーションや働く場所の拡大です。

コロナ禍において、東京本社にはほぼ社員がいない状況に。今後も引き続き、時間と場所を自ら選択する働き方を推進していくという。

長瀬氏:「デジタルツールの活用により、リモートでもうまくコミュニケーションを取っている社員が多くいますが、会議が非効率になった、孤独感や不安感があるという声もまだあります。社内調査ではコミュニケーションと組織の生産性に相関があるという結果も出ているので、より密に、よりストレスなくコミュニケーションが取れるようにルールやガイドの整備も含めて対応していきたいと思います。
働く場所に関しては、日本国内はワーケーションも認めています。単身赴任を解除する事例も出てきています。場所の選択肢を幅広く増やしていますが、問題が起きないかを今後見ていき、海外も含めて働く場所について更に検討していきたいと思っています。」

2010年から約10年に及ぶ、在宅勤務普及に向けた同社の取り組みを通じて見えてきたのは、まずは小さくても実践してみるのが成功のカギを握るということ。長瀬氏もその点は実感しています。

長瀬氏:「リモートワークとなると、生産性は落ちないか、コミュニケーションは希薄にならないか、と心配になることが多いと思いますが、まずはできるところから始めてみるのがよいでしょう。実践してみると心配していたことが大きな問題にはならないことが分かりますし、見えていなかった課題も出てくると思います。そこで出てきた課題に対応しながら、対象者等を拡大していけると着実な普及に繋がっていくはずです。スモールスタートする際は、リモートワークをしたいと要望のある部門で実施するのがおすすめです。要望のある部門で実践した方が、多くの社員が実践しますし、検証にも協力が得やすいので、スムーズな実践・検証ができると思います。」

課題が出ることを恐れずに一歩足を踏み出してみる。そしてその都度検証と対応策を講じることで、リモートワークを定着させられることをリコーの取組みは示しています。

株式会社リコー

東京都
所在地 東京都
業種 製造業
企業規模 5000~9999名
URL https://jp.ricoh.com/

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