テレワーク環境の整備と社員アンケートを繰り返し、試行錯誤しながら一歩一歩改善を進める
POINT
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部門ごとの業務特性にあわせて、ルールを設けて柔軟に対応。
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ITツールやルールの整備、テスト導入、社員アンケートと試行錯誤をしながら課題をクリア。
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オンラインの採用活動は就職活動の敷居を下げ、例年を超える応募数に。
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出社とテレワークを社員一人ひとりが選べるようにして、生産性向上とワークライフバランスを両立。
テレワーク導入で「NSKの業務に合った」働き方改革を目指す
電気通信工事やネットワーク、セキュリティ、内装設備、オフィスデザインなど、様々な設備の設計・構築を手がけるNSK株式会社。新型コロナウイルス感染症対策としてテレワークが注目された2020年、同社ではすでにテレワークは主流の働き方のひとつでした。
左 東日本第二事業本部 本部長 宮坂浩史氏
右 管理本部 企画・総務部 人事担当 坂本武治氏
同社がテレワークを検討・導入し始めたのは2017年。企業・人々のテレワークに対する関心が現在と比べて高くなかった中、同社本部長の宮坂氏を中心とした「働き方改革プロジェクト」メンバーがテレワーク導入を進めてきました。選べる働き方のひとつとして同社にテレワークが定着したのは、試行錯誤を繰り返すことで、「NSKの業務に合った」形にしてきたからだと言えます。「NSKの業務に合った」働き方を検討し、社員が少しでも働きやすい環境や制度を整え、どのように今のテレワークの形を作り上げてきたのかを伺いました。
宮坂氏:「建設業を展開する当社には、現業部門と内勤部門の2つの仕事があります。施工管理や技術営業といった外で仕事をすることが多い現業部門に属する社員には、移動のロスタイム削減などの効率化を考えて、もともとテレワークの形態のひとつであるモバイルワークを導入していました」
また、働き方改革以外の目的もありました。日本武道館がある九段下に本社を構えている同社は、2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会の開催に伴う交通混雑回避の必要性があり、テレワーク導入に積極的だったのです。
その後、国全体における働き方改革の機運の高まりを受け、同社でも長時間労働や(今後を見据えた)労働力不足に対して、もう一歩進んだ施策を打ち出していこうということに。世の中の高齢化とともに同社でも平均年齢は年々あがっており、社員が長く働き続けられ、かつ若手社員が職場に定着するような環境を整えることが必要だったのです。そこで2017年に各部署から集まった約10名の社員から成る「働き方改革プロジェクト」が発足しました。そして現業部門だけでなく、内勤部門にもテレワークを導入し、全社員がテレワークを働き方のひとつとして選べるようにしたのでした。
宮坂氏:「当社では2011年にG suite(旧Google Apps、現Google Workspace)を導入し、2016年には全社員にスマートフォンを支給しています。加えて、テレワーク可能な環境を整えるため、2018年のPCリプレイスを機に利便性を考えて全社員2in1のモバイルPCに変更しました。最近では、在宅勤務中のオンライン会議を快適にするために、イヤホンを全社員に支給したりしました。その他にも、セキュリティ対策を含めたルール整備や社員への周知徹底なども行っています。これらの施策に対しては随時オンラインでアンケートを実施することで、社員の反応や要望を確認し、改善に活かすようにしています」
このように試行錯誤を繰り返し、一つずつ課題を解決しながら、選べる働き方のひとつとしてテレワークの定着を図ってきました。
全社一律でなく、部門ごとで異なるルールを設けて柔軟に対応
2020年、コロナ禍での外出自粛要請の際は、それまでテレワークを選んでこなかった社員も、テレワークをせざるを得ない状況になりました。テレワークに対する戸惑いは、どちらかというとテレワークに慣れていない内勤部門の社員に多かったと言います。
全社員を対象に2020年5月末にアンケートを実施。会社でしか出来ないと思っていた業務も在宅で行えることが分かった。生産性の向上や、時間管理のしやすさを感じている点は地道にテレワークができる環境を整えてきた成果だろう。
宮坂氏:「はじめは、どうしたらいいのかわからない、テレワークで本当に仕事ができるのか?といったネガティブな声もありましたが、いざ体験してみると思っていたよりも対応できる実感を得たようで、ポジティブな意見が増えました。具体的に挙げると、移動時間削減によって、効率的に仕事ができる、通勤ストレスが軽減された、プライベートの時間を十分確保できた、家事・育児の両立が図れたといったものがあります」
現在同社ではメール対応やミーティングをはじめ、現業部門は図面作成や機器設定、機器検証、朝礼・終礼など、内勤部門は仕入・受発注対応や請求書対応、システム確認など、実に多岐にわたる業務をテレワークで行っています。
一方で、全社員が一斉にテレワークになったことで、新たな課題が浮き彫りになりました。職種や業務内容によって事情が異なることから、全社統一のルールを策定するのではうまくいかないことに気づいたのです。たとえば、現業部門は決められた時間に決められた場所にいなければならないため、内勤部門と同じルールではテレワークを活用できません。そのため、今では部門ごとでルールを設けて運用しています。 たとえば、内勤部門は出社と在宅勤務を選べますが、社内に誰もいなくならないよう、各部門内で交代制での在宅勤務としています。現業部門については、業務上外出している時間が多いため、出社、出先でのモバイルワーク、在宅勤務を業務の都合に合わせて選べるルールを設けています。また、出先での勤務中はPCに覗き見防止フィルターの取り付けが必須です。
他にも、テレワークの問題としてよく挙げられる「捺印」「評価」「運動不足」といった問題に対しては、同社は次のように対応しています。
宮坂氏:「施工管理の業務では紙に印刷して捺印するのがまだまだ一般的ですが、当社ではテレワークに対応するために、電子印鑑・決裁サービスを導入しました。また、上司からの評価については、テレワークだと目に見えない部分も多く、難しいところだと感じています。この部分をフォローするために、できた・できなかったが明確にわかるような目標設定をするように工夫しています。他にも、運動不足を解消するために勤務時間中でもよいので、全社員に対して1日のうち15分は身体を動かす時間とするよう定めました」
とはいえ、まだまだ改善の余地はあるというのが現状。今後もツールやアプリの拡充、ルールの見直しといった環境面の整備、制度の構築や見直しをしていく予定です。会社が契約し、社員が自由に使えるようなコワーキングスペースの導入なども検討しており、さらなる働き方改革の推進を目指しています。
また、働き方の選択肢が多いことは、社内だけでなく、社外に対しても力強いメッセージになっています。
坂本氏:「今年は新卒採用選考もWebシステムを利用して実施しました。オンラインで面接ができることでエントリーしやすくなり、例年にも増して、様々な候補者が集まったと思います。また今年の新入社員の研修はWebと集合研修を組合わせて行ったことで、普段関わりの少ないグループ会社の社員とのコミュニケーションも、より気軽で密にとれたのではないでしょうか」
出社とテレワーク、どちらを選んでも快適に働ける環境を整備
同社では2020年秋時点で、週2日までのテレワークと出社を織り交ぜたハイブリッド型の勤務体制をとっています。そんな中、社員もそれぞれが試行錯誤を繰り返しながら、「テレワークで対応できる業務とできない業務があるものの、しっかり業務精査をし、計画的に行えば問題ない」など、テレワークで高いパフォーマンスを出すための気づきを得ているようです。今後も感染状況に応じて、いつでも柔軟な対応ができるようにしています。
働きやすいオフィス空間造りのプロフェッショナルであるNSK株式会社。テレワークが主流となり出社している社員は少ないが、自然とコミュニケーションが取れるようなレイアウトやミーティングブースを設置するなどの工夫がされている。
コロナ対策やオリンピック開催の有無に関係なく、テレワークは働き方の選択肢のひとつとして、これまでも、そしてこれからも有効だと言います。
宮坂氏:「自分が抱えている仕事をよりスムーズに進めるためには、出社とテレワークのどちらがいいか。働き方を自分自身で選べることで、一人ひとりの社員の生産性向上とワークライフバランスの両立を目指すことができます」
坂本氏:「テレワークを導入する前は、ハードルが高そうなイメージを持つ企業・団体もあるかもしれませんが、まずはできることから少しずつ進めていくとよいと思います。導入にあたり様々なことを整備する必要が出てきますが、助成金や導入事例、支援してくれる企業や窓口などがありますので、それらをうまく活用しながら取り組んでみてはいかがでしょうか」
宮坂氏:「現在の出社率は2割~3割程度です。出社率が低いからといってオフィスを無くすことはできません。オフィスデザインの知見を活かし、出社した社員が自然と集まるレイアウトにすることで、コミュニケーションの活性化を図っています」
多様な働き方の中から、社員が自分に合ったものを選べることで、より働きやすさを感じてもらえます。それは、ひいては社員一人ひとりのより良い仕事、お客様の喜びにつながるのです。時間をかけて試行錯誤を繰り返しながら、自社に合ったテレワークの形を徐々に作り上げていったNSKの取り組みを参考にしてみてはいかがでしょうか。
NSK株式会社
所在地 | 東京都 |
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業種 | 建設業 |
企業規模 | 100~299名 |
URL | https://www.nsk-net.co.jp/ |