ページの先頭です

ページ内を移動するためのリンク
本文(c)へ

ここからグローバルナビです。

グローバルメニューここまでです。

ここから本文です。

ICT環境の整備で最大9割のテレワーク実施を実現。工事現場の従業員もリモート作業が可能に

東京都
戸田建設株式会社

POINT

  • 生産性とワークライフバランス改善のため、働き方改革に取り組んでいた。

  • モバイルデバイスとシステム、アプリの整備で、内勤者の約9割がテレワークを利用、作業所勤務の外勤者を含めても約7割を実現。

  • テレワークへと急速に舵を切ったため、業務フローや評価制度の整備が課題。

  • 社員を信頼し任せる経営陣と、その信頼に応えプロ意識を持って自律して働く社員がテレワーク導入の礎となる。

働き方改革を目指した積極的なICT整備が、テレワークへのスムーズな移行を実現

2月25日に決定された新型コロナウイルス感染症対策の基本方針において、患者・感染者との接触機会を減らす観点から、テレワークや時差出勤の推進等を強力に呼びかけることとされ、総務省はじめ政府から各方面へ積極的な活用の呼びかけが行われました。
4月の緊急事態宣言時には多くの企業が出社の自粛を行いましたが、混乱が生じたケースもあり、オフィスへの出社からテレワークへと円滑に移行できたかどうかを分けた一つの要因は、モバイルデバイスとシステムをどれだけ事前に準備できたかどうかにあります。

左 ダイバーシティ推進室推進課長 藤谷康晴氏
右 本社総務部総務課課長 村山博一氏

戸田建設も、緊急事態宣言を受けて、テレワークへと移行した企業のひとつ。宣言以前は、ほぼ全社員がオフィスに出社して業務にあたっていたにも関わらず、テレワーク体制へのスムーズな移行を実現しました。そして、緊急事態宣言が明け、数ヶ月が経過した秋においても、首都圏各支店を中心におよそ3割がテレワークを利用。テレワークによる勤務は、すっかり同社に根付きました。
現場作業が多い建設業において、同社がスムーズにテレワークへと移行できた理由についてお聞きしました。

戸田建設が、円滑なテレワーク導入に成功した理由。それは、2014年より同社が進めてきた働き方改革によるものでした。知的生産性と労働生産性を高めるために、スマートフォンやモバイルパソコンなどのデバイスのほか、Web会議や社内コミュニケーションなどのICT環境を導入してきた成果が実ったのです。それを中心的に推し進めてきたのが、本社総務部総務課の課長・村山博一氏です。

村山氏:「当社は、もともとABW(=Activity Based Working 時間と場所の制約を受けずに自由に仕事をする働き方)を推し進めてきました。例えば、昨年・今年とオフィスのフリーアドレス化やコアタイムのない完全フレックス制を導入してきました。その意味では、他社に比べると、テレワークへの移行がスムーズだったと思います」

モバイルデバイスを全従業員に支給、内勤・外勤問わずテレワークが可能に

1881年(明治14年)に創業し、2021年には創業140年を迎える歴史ある建設会社である戸田建設は、どのようにテレワーク環境を整備してきたのでしょうか。
テレワークの一形態として、在宅勤務の検討を始めたのは2014年9月のこと。多様な働き方の実現を目指すダイバーシティ推進室が中心となり、介護目的の在宅勤務制度の導入を始めます。トライアルとして、最初に制度を利用した社員が、現在ダイバーシティ推進室で推進課長を務める藤谷康晴氏でした。

藤谷氏:「当時はダイバーシティ推進室の所属ではなかったのですが、私が母を介護していたことから、トライアルの打診を受けて利用しました。週に1回在宅での勤務が認められ、母の様子を見ながら仕事をできるのでありがたかったですね。一方で、当時はノートパソコンやスマートフォンの支給はなく、また、自宅からアクセスできる情報にも制限がありましたので、不便を感じたのも事実です」

実施率(2020年4月~6月末在宅勤務実施状況)

緊急事態宣言が発令された4月以降6月末までの間に、戸田建設では全体の67%がテレワークを利用。研究開発部門や法務部など、テレワークと相性のいい部署では全社員がテレワークで勤務している。

トライアル期間を経て、2015年4月より在宅勤務制度が開始されますが、対象が介護者や育児者に限られ、仕事に必要なパソコンなどの機材も自分で用意する必要があるなどの課題があり、利用はごく少数でした。
それを受け、戸田建設は、「ABW」の理念に基づいた仕事環境の整備に本格的に乗り出します。そのきっかけは、2024年完成予定の、本社ビルの建て替えでした。
自由な働き方ができるスマートオフィスというコンセプトの元で開発した、仮移転先の本社ビル「T-FIT HATCHOBORI」。IoTやICT機器を導入し、労働生産性や知的創造性を向上し、新しい働き方を検証するオフィスビルです。その理念と合致するように、働き方改革を急速に進められたのです。

2018年12月、戸田建設では、工事現場を監督する工事統轄部に所属する従業員から、社内のイントラネットに接続可能なスマートフォンを支給しました。これにより、パソコンのない現場で必要な写真を確認でき、コミュニケーションアプリの導入による協力会社の従業員とのやり取りも円滑化しました。業務にかかる手間と時間を削減し、ワークライフバランスが向上したのです。
その後、モバイルデバイスの支給範囲を拡大し、2020年の3月には原則すべての従業員にスマートフォンを用意。その他、モバイルパソコンPCまたはノートパソコンPCへの移行を順次進めています。さらに、BCP(=Business Continuity Plan 事業継続計画)の観点から、2011年より「G Suite」(旧Google Apps)を全社で導入し、書類のクラウド化を進めていた同社では、現場や紙の書類が不可欠な職種を除く、全従業員がリモートで作業できる体制が整ったのです。

本社ビルの仮移転で紙の書類を削減し、働く場所も自由に。職場に新たな交流が生まれる

2019年12月、戸田建設は本社を「T-FIT HATCHOBORI」へと仮移転します。その際に実施したペーパーストックレス(紙自体は出力するが、必要無くなれば電子データ化し、紙文書はすぐに処分する取組)とフリーアドレス化が、結果として、業務のテレワークへの適応を推し進めました。

フリーアドレス制を採用したオフィススペース。自由に席を選んで作業できるフレキシブルエリアや気軽に打ち合せできるミーティングエリア、個人の荷物を収納するモバイルロッカーなどを設けている。

村山氏:「仮移転前の段階では、本社ビルにA4用紙を積み上げて1万1,048mにもなる膨大な量の紙文書がありました。これは、富士山2.9個分もの高さになります。この紙文書の処分にランキングをつけるなど、ゲーム形式を取り入れながら各部署に徹底を依頼したところ、最終的に約80%の紙文書を減らすことができたのです」

2018年から導入と検証をしていたフリーアドレス化は、“自分の席”という固定観念から従業員を解放し、好きな場所で働くテレワークの下地をつくりました。当時、藤谷氏が総務担当として勤務していた首都圏土木支店で初めて導入されました。当時のことを藤谷氏は振り返ります。

藤谷氏:「従来使用してきたデスクトップパソコンからモバイルパソコンへと道具が変わり、自分の席がなくなるフリーアドレス化には、反対の声を上げる社員もいました。しかし、支店長が積極的に賛成してくれたことから、風向きが変わりました。フリーアドレスで仕事をしてみると、これまではあまり交流のなかった従業員同士でのコミュニケーションが生まれ、職場に活気が生まれました。さらに、2019年のテレワーク月間には、シェアオフィスを契約し、営業社員を中心に働く場所を一部自由化。商談の後に帰社せずに書類を作成でき、業務が効率化したとの声が上がりました」

電子署名やドローンによる現場の監視作業を導入、生産性を落とさずに働き方を効率化

このように、テレワークに向けた下準備が整っていた戸田建設では、緊急事態宣言時においても混乱が起こることがありませんでした。ピーク時には、本社内勤者9割の社員がテレワークで業務にあたっていたという戸田建設。それを可能としたのは、状況に応じた迅速な判断と行動によるものです。

神奈川県逗子市と連携し、ワーケーション施設「ON/OFFice ZUSHI」を運営し、同制度の実証実験を行っている。テレワークを推進している企業が、会議や研修、チームビルディングなどに利用することを想定している。

村山氏:「テレワークのネックとなるのは、従来の業務フロー上でどうしても必要となる紙ベースの承認と、工事現場の作業です。紙ベースの承認については、当社の場合、緊急事態宣言を受けて、電子署名のシステムを導入して解決しました。工事現場に関しては、どうしても現場への立ち会いが必要となるのですが、Google Meetを活用したミーティングの導入や、ドローンを使った現場の監視作業の効率化などで、効率的な働き方を模索しています」

肝心の生産性について尋ねると、「生産性が落ちたとはまったく感じない」と村山氏と藤谷氏は口を揃えます。今後、まだ「制度」としては確立していないテレワークの業務フローや評価制度を整備し、社内文化として定着させることを戸田建設は目指します。さらに、ワーケーションによるワークライフバランスの改善とともに、働く場所を限定しないワーケーションならではのメリットを活かし、現地人材の採用および地域創生の取り組みにも力を入れていく予定です。

テレワークの実現のために必要なのは、ハードとソフト、そして、「社員が目の前にいなくても社員を信頼して任せてくれる経営者」であると村山氏は言います。一方で、信頼を得た社員には、高い専門性を持ちながら、自律して成果を自ら追求するプロフェッショナル意識が求められます。

村山氏:「当社の場合、テレワーク自体が目的ではありませんでした。働く人が自ら選択して最適に働ける『働き方改革』の実現という目標がテレワークにつながっています。実際にテレワークが始まってみると、子育て中や介護中の社員からは働きやすくなったという声が上がってきています。通勤時間がなくなって、オフの時間が充実したという社員もいます。テレワークを検討中の企業の皆さんは、まずは前向きに取り組んでみてください。問題も発生すると思いますが、社員同士で力をあわせて乗り越えた先には、多くのメリットがあるはずです」

戸田建設株式会社

東京都
所在地 東京都
業種 建設業
企業規模 1000~4999名
URL https://www.toda.co.jp

本文ここまでです。

ここからサイトのご利用案内です。

ページの先頭に戻る

サイトのご利用案内ここまでです。